
外貨建・エブリバディプラスは、明治安田生命が製造し、各種金融機関が窓口販売する外貨建ての終身保険です。実に国内の80を超える金融機関で販売されていることから、知名度の高い保険ですが、果たして本当に魅力的な商品なのでしょうか。
【注意】エブリバディプラスは外貨建ての保険!
エブリバディプラスは、外貨建て保険です。2016年に日本銀行がマイナス金利を導入して以来、日本国債の利回りは低下の一途をたどり、まともな利息収入は期待できなくなりました。円建て保険は国債等で運用し利回りを保険の積立利率に組込む仕組みですが、利回りが期待できなくなってしまった為やむを得ず外貨建てで運用せざるを得なくなったのです。
積立利率を魅力的に見せるために、元本が棄損するリスクとトレードオフしたのが外貨建て保険です。そのため、死亡保険としては保証額は外貨建では増えますが、あくまで外貨建ての話であり、日本円での保証はありません。解約する際の為替レートによっては、さらに増えることもあれば、元本が割れてしまう可能性もあります。
【注意】エブリバディプラスは運用系の保険です!
エブリバディプラスは手持ちの日本円をアメリカドルやオーストラリアドルに両替することで、外国の金利を取り込むことができます。それゆえ積立利率を高めることができています。但し、その分リスクも増えるので一概にメリットだけではありません。
外貨建・エブリバディプラスのメリット

エブリバディプラスのメリット①:高利回り
外貨建て保険であるため、円建ての保険よりも高利回りにすることができます。日本は長らく低金利を続けており、2016年にはマイナス金利を導入しています。それゆえ日本国債などで運用しようにもまともな利回りが出せません。
円建て保険ではもはや商品としての魅力が破綻してしまうため、保険各社は少しでも利率の確保のために外貨建てにして、海外の金利で保険商品の魅力を高めています。但しリスクも増加するので、必ずしもメリットと言えるかは難しいところです。
2021年7月1日から15日契約分の予定利率は2.25%です。ただし注意していただきたいのは、予定利率は実際の利回りではありません。予定利率には差し引かれるべき経費が控除されていない、名目的な利率でしかありません。誤解を生む表記をしていることは顧客本意と言えないところです。
エブリバディプラスのメリット②:契約5年後に死亡保証アップ!
エブリバディプラスは死亡保険ですが、契約開始から5年間はあくまで最初の外貨建の金額の保証です。但し5年後には死亡保険額がアップするので、5年以上経過すれば最初の両替した金額よりも多く受取人に渡すことができます。
死亡保険ですから、契約するのは自身に万が一が発生した際に少しでも多くのお金を家族に遺したいという意向から契約される方が対象となります。保険加入後5年経過すれば死亡保険が一気に増えてくるので、自分ではもう使わないから増やして家族に残したい場合はメリットと言えます。
エブリバディプラスのメリット③:外貨運用の利益を期待できる!
外貨建てにすることで、海外の金利を適用し利回りを期待できると前述しましたが、為替差益も狙えるようになります。外貨に両替しますが、両替当時よりも為替レートが円安に傾いた場合、円換算額ではお金が増えることになりますので、それだけでもより多くのお金を残せる期待もできます。
また、目標値を設定することができます。例えば105%の目標値を設定した場合、手数料や為替レート、市場調整を考慮した上で円換算額が保険金額よりも5%増えた場合にはその時点で自動的に円に両替をして円建て終身保険に移行することができるのです。こうすることで、定期的に為替相場を気にしなくても放っておくだけで自動的に利益確定してくれるような仕組みを作ることができます。
【注意】ここでの目標とは、解約控除や市場調整込みでの目標です!
外貨建・エブリバディプラスのデメリット

エブリバディプラスのデメリット①:為替リスクがある!
外貨に両替するということは、当然のように外国為替の変動を受けるということです。例えば1ドル100円の為替レートが99円に円高推移した場合、それだけで保険金額の1%程度は損失することにつながります。
当たり前の話ではありますが、いくら利回りが良くても為替が円高になってしまうとその分、円に両替した時の額面が減りますので利回りの意味がなくなってしまう可能性もあります。
エブリバディプラスのデメリット②:市場調整リスクがある!
外貨建て保険を販売する営業員の中には、若手だと証券市場の知識が弱い営業マンもいます。彼らは証券やマーケットに関する知識が乏しく、販売営業を行う際に市場調整のリスクを説明できないことがあります。
市場調整とは、契約した時の市場金利よりも、解約した時の市場金利が高くなっている場合、解約返戻金が減少するというものです。逆も然りで、契約した時よりも解約した時の市場金利が低ければ、解約返戻金は増加します。
これは保険会社が保険契約者から預かった保険は債券で運用するためです。債券の価格は市場金利と反比例するので、将来市場金利が上がっていく局面においては、非常に不利になる可能性が高いです。
エブリバディプラスのデメリット③:手数料が高すぎる!
エブリバディプラスは手数料の高い保険と言えます。まずこの保険を契約する際には、契約初期費用として保険料の3.8%が手数料として引かれます。昨今の手数料関係に厳しい投信業界では、インターネット経由では購入手数料無料だったり、銀行窓口でも2〜3%の範囲の購入手数料ですが、この保険は高いと言われる投資信託の手数料よりも高いです。
更に、日本円を両替する際に50銭の為替手数料が発生します。およそ0.5%の手数料です。しかも外貨から円に戻す際にも50銭のコストがかかるので、往復では1円のコストです。要するに、目に見える手数料だけでも約4.8%とかなりの手数料が引かれることになります。
その上で保険契約関係費用という、表に出さない契約維持のためのコストもかかっています。実際にはかなりの負担がかかっていると思ってください。
現在は保険加入によるデメリットの方が大きい
2021年7月現在、アメリカはコロナ禍の影響によってゼロ金利まで政策金利を引き下げていたのですが、力強い景気の回復によってテーパリング(金融緩和の縮小)を検討しています。
そうなれば、将来的には政策金利が徐々に引き上げられ、市場金利も連動して上昇していく可能性が高いと考えられます。つまり、近い将来金利は上昇していくので、現在の予定利率は相対的に低い金利になってしまうかもしれません。
また、市場金利が上昇していくということは、市場調整によって解約返戻金が減少してしまうことを意味します。つまり、現在の市況環境下では、市場調整を行う外貨建て保険を契約すること自体に大きなリスクがあると言わざるを得ません。
契約予定者の年齢が保険加入限度年齢に近いとか、いずれにせよ相続税控除のために契約しておきたいなどの意向がない限り、現在この保険を加入することによるデメリットは大きいと判断できます。
外貨建・エブリバディプラスは金融機関の手数料稼ぎ
当サイトの基本理念ですが、保険は保険、運用は運用と区別して考えるのが基本的です。相続税控除のために保険に加入するのなら、別に外貨にして少しの利回りのために為替リスクを負う必要があるでしょうか。
外貨建・エブリバディプラスは、契約した時点で目に見えるだけで約4.3%の手数料(初期費用+為替片道分の手数料)が発生します。関係費用もあるので実際にはこの数字よりも大きな手数料となります。投資信託であれば購入手数料無料の商品も数多く存在します。
円貨建てであれば両替によって為替手数料を払う必要もないし、為替リスクもありません。それなのに、どうしてわざわざ外貨にする必要があるのでしょうか。増やして残したいのなら投資信託や株式でも十分です。
銀行などの金融機関がこの保険を販売するのは、単に収益性が高いからです。死亡保険は基本的に顧客本意ではなく手数料稼ぎのものがほとんどです。外貨の手数料も入りますから金融機関からすれば美味しい商品なのです。
金融機関からこの保険を勧められた際は、どうしてこの商品がいいのか、個別具体的に深く質問して納得してから契約することを強くオススメします。
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